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  3. 自分なりの上達への近道

アルバイトをしながらネイルスクールに通う生活を、私は毎日続けていました。
辛い日々でしたが、授業の予定の入っていない時はバイトかネイルの勉強しかしていなかったので、
余計な娯楽で浪費する暇がないという意味では良かったのかもしれません。
お昼も家で作ったお弁当を持参して、洋服も学生時代のものを適当に着回します。
家賃や光熱費といった支払いを除くと、ネイルアートのグッズや消耗品の補充以外にはほとんどお金を使っていませんでした。

ジェルネイルとの出会い

さてネイルアートに用いるポリッシュですが、本格的に学んでみるととても奥深いことを知りました。
最初に感銘を受けたのはやはりジェルネイルです。
これは通常のポリッシュとは異なり、とろみのあるゲル状のものを爪に塗ります。
今まで想像していたマニキュアとは全く異なる光沢、
また、自然乾燥ではなくUVライトの光を当てるという固め方。
軽いカルチャーショックを受けたものです。

全くのネイル初心者だった私がめきめきと腕を上げていくので、
スクールの講師からも、まもなく一目置かれるようになりました。
私が一気に技術が上達した理由として、思い当たることが2点あります。

自分じゃなく人にネイルする感覚

ひとつは目標を立てて、意欲的に練習していたことです。
ネイルを勉強しだして間もない頃は、自分の爪を用いて練習していたのですが、
後に専用の手の模型を購入して、そちらで練習するようになりました。
実際に試してみると分かるかと思いますが、
自分の爪にポリッシュを塗る時には、手の甲を上に向けて行います。
それにひきかえ、ネイルサロンではお客様と向かい合ってネイルにアートを施します。
自分とお客様に行う時とで、施術時の爪の向きは逆になるのです。

毎日、私は手の模型と向きあってネイルアートの練習をしました。
もちろんネイルの向きは自分から見て逆さまです。
鏡に写したように左右が反対になっている「鏡文字」や、逆さまの文字を書く練習をする感覚で
ほどこすネイルアートは、慣れるとなかなか面白いものでした。

第二にデザインの独自性があります。
幼い頃習っていたピアノを通して、私は繊細なデザインに対して人一倍目が肥えていました。
クラシックやゴシック、アールヌーヴォーなど、発表会やコンサートで当時よく訪れた講堂には
その類の装飾がふんだんにあしらわれていたものです。

ネイルスクールでもこのようなエレガンスなデザインの練習を行いました。
他のスクール仲間は無難な色合いやデザインばかりに挑戦していましたが、私は違いました。
例えばネイルに差し色を入れたり、ストーンのチョイスを工夫したり。
ネイルの模範例として挙げられるデザインは、主に一般受けするものを、
言い方を変えると当たり障りのないものが用いられていました。
せっかく思い入れのあるデザインなのだから、思い切り表現したい。
私はそう思いながら、幼い頃実際に自分の目で見てきた講堂の装飾などを参考に、
ネイルアートを施していったのです。