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  3. ネイルと指と

私がネイルアートに興味を持ったのは、思えばすごいことなのかもしれません。
資格を取ることをすすめてくれたその女性に出会うまで、私はネイルアートに距離をおいていたのですから。
以前にもふれたように、高校時代に熱中していたバンドで私はドラムを担当していました。
爪が長いとスティックをうまく操ることはできません。バンドにのめりこんでいたころの私は
派手なファッションを好みましたが、爪だけは何の手入れもしていなかったのです。

気にしていなかった指先

それがある日、彼女に「綺麗な手」だとほめられたのです。ピアノを習う人は指が細いとよく言いますが、
幼い頃ピアノに没頭していた私も、人より指が細く長い方でした。
かけもちしているバイトのせいで手の甲はカサカサに荒れていましたが、
その女性は肌ではなく、手の形そのものをみてくれたのです。

私はハッとなりました。思えば私の人生は、常にこの指と歩んできたのですから。
ピアノ、サックス、ドラムと自分の指を使って自己表現してきた私にとって、
それは私の本質をみてくれるような嬉しさがありました。

このできごとがきっかけとなり、私は指先の手入れに気を使うようになったのです。
自分を象徴する体のパーツを磨くことで、自信が持てるのではないか。そんなささいな期待を胸に、
毎日ハンドクリ―ムでケアしたり、オイルでマッサージしたり。
そしてまもなく、ネイルポリッシュに挑戦しました。

自分でケアしたりデザインしてみる

もちろん最初は抵抗がありました。雑誌などでネイルアートの特集を見るたびに気になっていたものの、
やはりネイル=邪魔なものという思いが強かったのです。塗ってから乾くまでは
何も触ることができませんし、せっかく綺麗に塗れてもバイト中に傷がついて
見苦しくなってしまうこともしばしばありました。

それでもなお、惹かれるものがあったのです。
ネイルアートは、デザイン次第で手を華奢にも長くも見せます。まさにアートなのです。
爪という、指先の皮膚に手を加えるだけで、こんなに手の印象が変わるなんて。
奥深く、まるで魔法のようなネイルアートの世界にのめり込みました。

また、指先の手入れをすることで、普段の仕草も心なしか丁寧になっていきました。
ネイルポリッシュがはがれたり傷がついたりしないよう、無意識に手元に気を配るようになったからです。
おしゃれというと、服など体の大部分を占めるもので勝負するものだと思い込んでいましたが
気付けばそれも覆っていました。ネイルアートとの出会いは、私の価値観までも変えてしまったのです。