ネイルサロンを経営している以上、お客様との会話は欠かせません。流行ファッションやネイルなど毎日様々な話題で盛り上がりますが、不思議とどのお客様からも評判なのは、私自身の話です。確かにこれまで記事で書いてきたように、私の歩んできた道は波乱万丈に満ちたものと言えるでしょう。
ネイルにたどり着くまでに経験してきたからこそ
よく聞かれるのが「今までまったく別の道を歩んできたのに、突然ネイリストを目指して苦労はしないのか」ということです。もちろんに慣れない出来事に対面し、どのように対応すればいいのかと悩んだことは数え切れないほどあります。もっと昔からネイルの世界に触れていれば、こんな苦労はしなかっただろうと考えることも。それでも私は、この人生を歩んできて良かったと思っています。
例えば価値観。バンドをやっていたこともあり、私はパンクやロックなどのファッションに対して、目が肥えている方です。小さな支店で修業を積んでいた頃から、いわゆる辛口デザインへ人一倍知識と理解があったように思います。また幼い頃にはピアノを通してクラシックに通じていたことから、繊細でたおやかなデザインにも深い思い入れがあります。発表会でしか着られなかった服、コンサート会場での上品な雰囲気など、今思うと音楽そのものに限らず、視覚的にも大きなインスピレーションを受けていました。このような経験があったからでしょうか。サロンでの下積み時代、「あなたのネイルは単に流行を追うのではなく、持ち前のセンスや感性がにじみ出ている」と当時の店長から評価され、とても嬉しかったことを覚えています。
チャンスだと思うこと
人の挫折は新しい価値観を手に入れるチャンスなのだと私は思っています。何か大きな問題に直面した時、そこで立ち往生するか、乗り越えようとするか。そこでその後の人生は変わります。私がネイリストとして一人前になれたのも、今まで何度も紆余曲折を経て、その度に新しい世界を経験してきたからに他なりません。
仕事中、常連のお客様から少しいじわるな質問をされることがあります。これまで様々な道を歩んできたあなたに、このネイルサロンも長続きするのかしら、と。確かにそれは至極真っ当な疑問でしょう。けれども今の私なら、胸を張って肯定することができます。私は自分を表現することが好きなのです。言われたことを決められた手順で行うだけの通常のOLとは異なり、ネイリストはお客様の声を元に、数あまたとあるデザインの中から最も似合うネイルを提供します。
音楽も演奏を通して自分の個性がにじみ出るもの。ある意味では、演奏とネイリングは似たものと言えるでしょう。しかし演奏者とネイリストの何が違うといったら、後者は相手を引き立てるお手伝いをすることです。様々な世界で多くの人に支えられてきた私が、今度は人に恩返しをする番だと信じています。