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  3. ステージの上の喜び

その時私が知り合った友人と一緒に中学に進学しました。その中学は部活動がとても盛んな学校で、
全員何かしらの部に入らなくてはならず、私とその友人は迷わず、吹奏楽部に入部しました。
私はやはり、また音楽の夢を完全にあきらめることはできなかったのです。
もう、プロの道に進むことはできないと思っていましたが、
せめて、趣味で音楽を楽しむのは良いのではないかって思ったのです。
私の親友はそんな私に「音楽っていうのは、音を楽しむって書くんだから、それで良いじゃない」と
言ってくれたのです。

演奏する楽器選び

私は何を演奏しようか迷ったのですが、サックスを選びました。たまたま学校にサックスが一本残っていて、
それを譲り受けることができたので、それを使って練習ができると思ったのです。
初めてサックスの音を聞いたときに、その深い音色に感動しました。
サックスの音というのは人間の声に一番近いのだということをその時に初めて知ったのです。
まるで、サックスに安らぎを求めるかのようにサックスの練習にのめり込みました。

私の通っていた中学校は吹奏楽団のコンクールで何度も優勝している学校だったので、
練習はとても厳しかったです。レベルが高く、最初のうちは果たしてついていくことが
できるのだろうかと思っていましたが、もともと楽譜を読むことは得意だったので、あとは慣れの問題でした。
サックスは当然のことながら、私が小さい時に習っていたピアノとはまったく違う楽器です。
なかなか音が出なくて、挫折しそうにもなりましたが、どうしても吹きたいと思っていたので、
先輩にいろいろと教えてもらいながら、コツを覚えて、2~3日で音が出るようになりました。
初めて音が出た時の感動は今でも忘れられません。

毎日の練習に力を入れました

それからは毎日のようにサックスと格闘していました。机に向かっている時間よりも、
サックスの練習をしている時間の方が長かったのではないかと思えるほどでした。
学校の勉強はそこそこできましたが、私は自分があまり勉強は好きではないということに
気づいていたので、赤点を取らない程度にがんばるぐらいでした。
父も母も毎日の生活が精一杯で、そんな私に特に何も言いませんでした。
ただ、元気に学校に通ってくれていれば、それで良いと思っていたのかもしれません。

ですから、私はのびのびとした中学校生活を送ることができたのです。
自分の好きなサックスの練習をして、定期演奏会などで舞台に出て、みんなの拍手を浴びて、
それだけで満足でした。その頃にステージの上で注目され、拍手喝采を受けることの喜びを知ったのです。