吹奏楽部の練習はとても厳しかったです。全国大会で何度も優勝しているために、
それを目標にみんなで一丸となって練習をしなくてはなりません。
ひとりのミスが致命的になるので、徹底的に音合わせが行われました。
しかも、音を合わせるだけではなく、いかに良い演奏をするかといことも大きな課題でした。
曲がりなりにも私は子供の頃はプロを目指そうと思っていたので、必死でした。
子供の頃は自分には音楽の才能があると勝手に思い込んでいましたが、そうやって練習をしてみると、
自分には才能なんてないんじゃないかと思ってしまって落ち込んでしまうことも多かったです。
特に数人、部内でも恐れられている先輩たちがいました。練習の時でも、容赦しません。
音をちょっと外したり、みんなとズレたりしただけで、注意され、時には小突かれることもあったのです。
それが怖くて、余計に演奏に集中することができず、びくびくしながらサックスを吹くということもありました。
夢と忍耐力
私は小さい頃に抱いた夢を思い出し、プロを目指すんだとしたら、このぐらいのしごきには
耐えなくてはならないし、ひょっとしたらプロの道はもっと厳しいものだから、
このぐらいで根を上げるわけにはいかないと思っていました。
もちろん、当時はプロを目指しているわけではありませんでしたが、
子供の頃の自分を思い出し、歯を食いしばって、そのしごきに耐えていたのです。
友達との距離感
ところが、私に「音楽は音を楽しむものなのよ」と言って吹奏楽部に誘ってくれた友人は
そういうわけにはいきませんでした。
彼女は音を楽しむどころか、音を憎むようになってしまっていたのです。
入部したての頃は、一緒に練習に行くのが楽しみだったのに、
中学2年になる頃にはだんだんと彼女はサボるようになりました。
最初のうちは風邪を引いたとか、体調不良で、というような理由をつけて休んでいましたが、
だんだんと何も言わずに部活を休むようになり、とうとう、退部してしまったのです。
そして、知らない間に学校外の友だちとつるんで遊ぶようになり、部活どころか、学校にすら来なくなりました。
私とはそれでも連絡を取り合ってはいましたが、何となく私はそんな彼女と距離を
感じるようになりながら、部活は続けていたのです。
しかし、心のどこかで、本当にこのままで良いのだろうかという疑問が残っていたのは確かです。
私も音を楽しむことができなくなっていました。