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  3. 音を楽しむことに気づいた時

そんな私にも転機が訪れます。ある日、親友に誘われて、あるバンドのライブを見に行ったのです。
たまたまその日は部活が休みでした。
親友と会うのも久し振りだったので、それが一番の目的で、一緒にライブを見に行ったのです。
彼女はいつのまにか学校を辞めていて、アルバイトをしながら、毎日楽しく暮しているようでした。
そんな彼女はとても輝いて見えました。

友達のイメチェン

それまではどちらかというとおとなしめの地味な感じの子だったのに、久々に会った彼女は髪
を金髪に染め、両耳に大きなピアスをしていました。お化粧も派手になり、最初喫茶店で会った時、
彼女に気づかなかったほどです。彼女は見た目だけではなく、性格も変わったようでした。
饒舌になり、陽気になっていて、私はそんな彼女に圧倒されっぱなしでした。
喫茶店でお茶を飲んでいる間中、私たちが会わなかった間に彼女の身に何があったのかと
いうことをしゃべりまくったのです。

私は別人と会ったかのような気持ちになりましたが、その声もしぐさも、まさに彼女のものでした。
人間というのはこんなにも変わるものなんだとびっくりしたのです。
しかし、彼女の優しさや面白さというのは昔と全然変わっていなかったのでとても安心しました。
そして、新宿のライブハウスにふたりででかけたのです。そのライブハウスではいくつかのバンドが
ライブを行っていました。彼女はその中のひとつのバンドのリードボーカルに片想いをしていたのです。

(参考記事)

ライブハウス

初めての生ロック

小さなライブ会場にはぎっしりとお客さんが入っていました。ものすごい熱気にくらくらとしてしまいましたが、
すぐにそんなことにも慣れて、いつの間にかステージにいるバンドの演奏に酔いしれていました。
それまで、ラジオでしか聞いたことがなかったようなロックの音がライブハウスに満ちあふれていました。
周りの人たちは一心不乱に踊り、叫び、時にはボーカルと一緒に歌っていました。
私の親友も同じように一緒にいる私のことなんかすっかりわすれて、ステージに夢中になっています。

私もだんだんと気持ちが解放されていくのを感じました。
そして、その時にやっと本当の意味で音を楽しむというのはどういうことかということを初めて知ったのでした。
そして、それから私が吹奏楽部を辞めるまでに時間はかかりませんでした。

本当はその翌日にでも辞めたかったのですが、貴重な戦力となりつつあった私は引き留められて、
そんなに簡単に辞めることはできませんでした。
しかし、もう私は吹奏楽部での練習に魅力をまったく感じませんでしたし、もっと他のことをしたいと
思ったのです。いつでも戻っておいでという言葉をもらいながら、私は退部しました。
そしてそれと同時に夜遊びを覚えるようになったのです。