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  3. 親友との出会い

いじめの話はとてもつらく、思い出すのも苦痛です。
けれどもこのできごとがきっかけで、私は親友にであうことができました。

私が受けたいじめは、主に無視や陰口、そして物隠しでした。
文房具が隠されると、どうすることもできませんでした。転校生の私には、誰も頼る相手がいません。
隣近所の席のクラスメイトに頼もうとしても、汚いものが肌に触れたかのような声を上げて、
後ずさったり逃げられたりします。テスト前などに物を隠されると、もうどうすることもできなくなり、
隣のクラスから借りてきたりしたのですが、やがて私がいじめられっ子だと知られると、

貸してくれなくなりました。時にはエンピツ一本借りるために、上級生の教室へ交渉しに行くこともありました。
もちろん教師には相談しましたが、学級会などで「みんな仲良くしましょうね」と呼びかけるだけで、
ほとんど当てにはならなかった のです。

すぐ広まる噂話

小学生というのは、不思議なくらいに噂話が好きなものです。
――あの子はこのあいだ、こんなことをしたんだって。
――しかも家では、こんなこともしているってウワサだよ。
私への陰口は毎日のようにされました。目の届かないところで行われるのならまだしも、
わざと私の耳に届く場所で陰口や批難の噂話をする女子もいたうえに、
中には、本当にそんなことをしたのかと私に直接聞きに来る男子もいました。
もちろん私は否定しましたが、張本人が何を言っても、誰も受けあおうとしません。
かえって上げ足を取り、揶揄してくるのです。

けれども女子の中に、いつも中立の立場を保つ子がいました。例えば他の女子が根も草もない
私の噂話をしても、実際に本人がそうしているところを見た人はいないんでしょう、
と言ってその子は話を流してしまうのです。直接私に手を差し伸べてくれるわけではなかったものの、
クラスメイトのからかいや中傷から必ず私を擁護してくれました。

時期は流れて

しばらくしてクラスメイトもいじめに飽き、私は仲間として受け入れられるようになります。
例の中立の子ともすぐに打ち解け、学校ではもちろん、放課後も休日も毎日のように会っては遊びました。
引っ越して以来、学校の他にはあまり外に出たことのない私の手を取って、
隣町を探検したり、近所の公園ではしゃぎまわったりします。
親友として、互いがかけがえのない存在になるのにそう時間は掛かりませんでした。

以前にも触れたように、私は同年代の子と比べると価値観や物のとらえかたが少し大人びている子どもでした。
今回のいじめの中でも、周りの意見に左右されず自分の信念を貫いたその子となじめたのは、
当然の結果だったのかもしれません。