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  3. 達観した恋愛観

転校してきてまもない頃、私はクラスメイトとの関係や距離にとても敏感になっていました。
新しい環境の人間関係を把握したいという気持ちと、また、すでにはじまりつつあったいじめや中傷を
かいくぐるための抜けみちを探していたのです。友だちがいないので、休み時間になってもすることが
ありません。朝に登校してまもなく、授業と授業の合間の休み時間など、私は自分の席にじっと腰をおろし、
周囲の会話に耳をかたむけていました。

恋愛話が盛り上がる時期

クラスメイトはことあるごとに恋愛の話を持ちだしていたのを覚えています。
それも、最初に言いだすのは性別関係なく、なのです。
机のとなりあった男子と女子が話しただけで「付き合っている」と冷やかしたり、
それでも仲良くしようものなら「結婚だ」と騒ぎたて黒板にあいあい傘をかいたり。
今思えばほほえましいものですが、しつけにきびしい私立学校からきたばかりの私にとって、
彼らのやりとりは随分顕著なものとして目にうつりました。

周囲になじめていなかったこともあるでしょう。この年頃の子どもなら当然のように恋愛へ
興味を持っているものですが、私は常に一歩離れた場所から傍観していました。
あの子は○○君が好き、××君と△△ちゃんは両想いだ。
たとえそのような噂を耳に入れても、私は彼らのことは名前以外にほとんど知りません。
何とも感じようがないのです。 女子のグループが恋の話で盛り上がっているのが聞こえると、
滑稽でくだらないといつも思っていました。もちろん口には出しませんでしたが。

興味がない訳ではないけど…

思えば私の恋愛観は、幼い頃からひどくあっさりとしたものでした。
例えば授業中に鉛筆を床に落として、男子に拾ってもらったとします。
それがきっかけで、その男子が好きになることもあるでしょう。
人が誰かを好きになるきっかけなんてそれほど些細で、ふとしたところにあるもの。
今きらっている人が、明日には大好きになっているかもしれない。そのような感じでした。
だからこそ「○○ちゃんは××君が好き」とまるで一生付きまとうステ―タスのように、
誰かが誰かを好いていることについて噂するのは理解ができなかったのです。

人が他人の恋愛話に興味を持つのは何故なのだろう。
学年が上がっても、私は相変わらずそのように不思議がっていました。
いじめを受けなくなってからは、クラスメイトの女子から漫画や漫画雑誌を借りることがありましたが、
そこにもよく恋愛の話が描かれていました。きれいな顔立ちの男性キャラが登場するたびに、
友だちは「こんな素敵なボーイフレンドがほしい」とうっとりしながら語っていたのを覚えています。
恋愛や交際は素敵なことだとは思いますが、だからといって彼女たちの言い分は、
まるで異性をアクセサリーのようにみなしているようで私は腑に落ちませんでした。