12月には何度もケーキを食べる機会がありました。
家族の誕生日がこの月に集中しているわけではなく、様々な理由からクリスマスパーティーに参加したためです。
やはり一番のメインは、父親の仕事の同僚を自宅にお招きしてのホームパーティーです。
近所の子供を呼んで行ったパーティーや、また近所ので開かれたクリスマス会にも顔を出しました。
楽しかったパーティーの思い出
父のホームパーティーでは、それこそ夢のようなご馳走がテーブルに並んでいました。
様々な国のお客様も招待したためでしょう、その方々の母国のクリスマス料理なのか、
見たことのないオードブルがたくさん用意されていたのを覚えています。
好きな食べ物を小皿にとって食べるバイキング風の立食パーティーだったので、私は大人に頼んで
かたっぱしからおかずを取ってもらいました。おかげで自分の小皿にはいつも山のように食べ物が盛られ、
よく大人の笑いを買ったのを覚えています。
もちろんデザートも何種類も用意されていました。
お客様がそれぞれ持ちよってくださったのもあったのかもしれません。
クリスマスプディング、シュトーレンと呼ばれるパンなど、それこそ様々な国のクリスマスのお菓子が
並びました。ただ、当時の私には見なれないお菓子の名前が覚えられず、それぞれ単に
「黒くてもちもちした蒸しケーキ」「ドライフルーツがたくさん入ったパン」などといったようにしか
呼んでいませんでしたが。
メインのケーキは格別でした。人数分用意された小さなブッシュドノエルで、
どうやら近所のケーキ屋さんから特注で作ってもらったもののようです。
ケーキがたくさん並んでいるという、本来ならお店のショーウィンドーで見る光景。
それが自宅の庭先で繰り広げられているのです。それこそ自分がお金持ちの国のお姫さまのように思えて、
このような家庭で暮らしていることを本当に誇りに思っていました。
ホームパーティーの時期
各家庭のことも配慮したためでしょう、父の仕事仲間をお招きしたホームパーティーは
、基本的に12月の早い時期に行われることが多かった気がします。
代わりにクリスマス当日には、近所の子供たちを自宅に招いたパーティーが開かれました。
外で走りまわったりして遊んだあとには、メインイベントとしてみんなでブッシュドノエルを作りました。
市販のロールケーキに子供たちの手でショコラクリームを塗り、
フルーツやチョコレート自由に飾り立てていくものです。
年によっては大きなスポンジやカステラをショートケーキへとデコレーションすることもありましたが、
基本はこの切り株型のケーキを作りました。
実はこのブッシュドノエル、口には出さずとも少々不満に思っていました。
父のホームパーティーで食べたものに比べると、ずいぶんおそまつなものに思えたからです。
けれども今思うと、幼い子供たちのパーティーで豪華すぎるケーキを用意するのはかえって失礼ですし、
それに自らの手で楽しんで作るケーキの方が楽しめるという、母の配慮だったのだと思います。
このように文化や素朴さなどといった様々な理由から、
私の家庭では12月になるとブッシュドノエルを食べることがたびたびありました。
地域の市民施設やよそのおたくのパーティーにお招きされたときにはごく普通のケーキも食べましたが、
やはりクリスマスというと、この切り株型のお菓子が一番にうかびます。